認知行動療法は、考え方や受け取り方の偏りを修正して気持ちを楽にする方法だと言われます。
たしかにその通りなのですが、考えを変えることができない場合もあります。
気持ちが動揺しているときに、必ずしもその考えが間違っていないように思えるときがあるのです。
実際に、何かに失敗して落ち込んでいる人から、失敗したのは事実なのだから考えを変えようがないのではないかと質問されることもあります。
そのようなときには、気持ちの動きと考えをもう少し丁寧に見ていくようにすると良いと話をします。
失敗して気持ちが落ち込むのは、たしかに自然なこころの反応です。
失敗したときにそうした感情がわいてくるのは、こころが適切に動いているということでもあります。
そのときにはつらい気持ちになるかもしれませんが、それを乗り越えて先に進むことができれば、自信につながります。
しかし、つらくなりすぎて、それを乗り越えようという元気が出ないようだと問題です。
そのままだと自信を失って、同じような場面で萎縮してしまうことになります。
そうしたときにこそ、考えに目を向けるようにしてください。
そのときに目を向ける考えは、失敗したかどうかではありません。
つらくなっているときには、失敗したという現実を前にして、さらに他の考えが浮かんできているはずです。
「もうどうすることもできない」と考えて悪い結果だけを想像していないでしょうか。
そうしたときには、最悪の結果を想像してみてください。
そのために、どのような問題が起きる可能性があるのでしょうか。
その問題はあなたに具体的にどのような被害をもたらすのでしょうか。
その被害を最小限にとどめるためにはどのようなことができるのでしょうか。
そう考えることでいくつかの手立てが見えてくるはずです。
もしかすると「やはり自分はダメだ」と考えて落ち込んでいるかもしれません。
そうしたときには、何がダメで何がダメでないのか、具体的に考えてみてください。
ダメな部分があったとして、そのためにどのような問題が起きてくるのかも考えてみると良いでしょう。
認知行動療法ではこのように、失敗そのものではなく、失敗に対する評価に目を向けるようにしていくのです。