NHK連続テレビ小説「あさが来た」が、2001年以来のテレビ小説で、関東地区での平均視聴率が最高だったと話題になっています。
私も、時間に追われながらつい観てしまいました。
登場人物がそれぞれ個性的で視聴者を引きつけたようですが、なかでも主人公“あさ”の夫の新次郎の行動の緩急は見事でした。
ドラマを見ていない人にはわかりにくいと思うのですが、普段は遊び人で頼りがいのないように見える夫の新次郎が、妻の“あさ”が困ったときには裏でしっかりと支えていました。
ポイントポイントで“あさ”を助ける新次郎の姿勢は、問題に取り組んでいる人を手助けする専門家の態度と重なります。
私たち専門家が悩んでいる人の相談に乗るとき、折々に問題を整理するのを手伝ったり、必要に応じてアドバイスをしたりすることはあります。
しかし、専門家であっても、悩んでいる人の代わりになって問題を解決することはできません。
現実の問題に向き合って問題を解決できるのは、悩んでいるその人だけです。
もちろん、新次郎のような理想的な対応はドラマだからできることで、現実生活のなかではなかなか思うようにいきません。
私たちは、悩んでいる人を目にすると、つい手を出して代わりに問題を解決しようとしてしまうことがあります。
人の良い人ほどそのようになりがちです。
しかし、あまりまわりの人間が手を貸しすぎると、悩んでいる人は、自分の頑張りを実感できなくなります。
逆に、悩んでいるその人が少しずつでも問題を解決していくことができれば、自信を取り戻すことができるようになりますし、自分らしく生きていくことができるようになります。
このように、その人を静かに見守りながら、必要なときに力を入れて支援をするという緩急の態度が役に立つのはカウンセリングの場面だけではありません。
職場で上司が部下を育てるとき、学校で教師が生徒を育てるとき、家庭で親が子どもを育てるときなど、いろいろな場面で役に立ちます。
新年度に新しい人を迎えた職場や学校で、こうした緩急をつけた支援や指導をぜひ活用していただきたいと考えています。