アメリカ大統領選挙でドナルド・トランプ氏が勝利したことで、米国だけでなく、世界的に大きな波紋が広がりました。
予想外の結果に、株価や為替レートが激しく乱高下しました。
世界的な認知行動療法の専門家のネットワークでも、メーリングリストにいろいろな意見が流れていました。
そうしたなか、人工知能の限界という視点から大統領選挙の結果を解説した新聞記事が目に入りました。
今回の選挙で、膨大なデータをもとにコンピュータが予測した選挙結果がことごとく外れてしまったことを取り上げた解説記事でした。
コンピュータは、集まった数字を解析し、予測することは得意です。
人間には及びもつかないような膨大な数字をごく短時間で処理して、予測することができます。
ここで注意しないといけないのは、集まったデータを解析するとき、コンピュータは、数字があくまでも正しいという前提に立っているという点です。
しかし、実際には、数字が現実を反映しているとは限りません。
誰に投票するかと尋ねられたとき、すべての人が正直に答えるとは限りません。
とくに、今回のようにトランプ氏の品格が批判されているような状況では、トランプしに投票すると答えるのにはかなりエネルギーがいります。
他の人にどう思われるかを気にして、ヒラリー・クリントン氏に投票すると答えた人も少なからずいたことでしょう。
このように、厳密にデータを収集したとしても、収集した数字には様々に人間的な要素が入り込んできています。
人工知能は、そうした人間的要素を判断できるレベルにまで到達できていませんし、今後もそれは難しいかもしれません。
しかし、その一方で、クリントン氏の総得票数がトランプ氏の総得票数を200万票近く上回っていたとされていますので、コンピュータが完全に間違ったとも言い切れません。
こうした結果から、私たちが将来を予測するとき、データはデータとして大事にしながら、人間本来の不確実さを忘れないようにすることが大切だということがわかります。
それには、現実の流れに合わせてデータと直感を上手に融合させていく力こそが、これから私たちにとって必要になる“智恵”なのでしょう。