こころトーク

2016.12.30

第66回 「自分にとって大切なこと」

今年も残すところ、あと1日になりました。

皆さんも、良いこと、良くないこと、いろいろなことがあったと思います。

でも、そうしたことをすべて水に流してまた新しい年に向かおうと思う、その切り替えができるきっかけを作ることができるのが年末、年始の素晴らしさでもあります。

さて、私は先日、日本森田療法学会の学術集会で、認知行動療法について話をする機会をいただきました。

そのときに、ある勉強会でお会いしたことのある方からご挨拶をいただきました。

それは、日本臨床吃音研究会という団体の合宿でした。

全国から吃音の方が50人以上集まって合宿して吃音とどう向き合えば良いかを話し合うので、そこで認知行動療法の話をしてほしいという申し出でした。

私自身、吃音についてよく知らないので、役に立つ話ができるかどうか心もとなく、少し緊張しながら出かけました。

でも、案ずるより産むがやすしです。

実際に会場に着いてみると、会員の皆さん、とても温かく迎えていただいて、良い形で話をすることができました。

そのなかで、ある参加者の方に前に出てきていただいて、ロールプレイを使って、吃音で困った場面でどのように対処すれば良いかについて話し合うことになりました。

その人は高校の国語の教師で、生徒に絵本の読み聞かせをしたときの話をされました。

どもるのではないかと心配しながら読み聞かせをはじめて、最初はうまくいっていたのですが、ちょうど山場のところでどもって先に進めなくなったといいます。

とてもつらい様子が伝わってきたのですが、私はその方がなぜそのような授業をしたのかが気になって尋ねてみました。

すると、その方は、子どものころから吃音に苦しんできて、言葉の大切さや美しさを感じるようになったそうです。

その人は、そのことを子どもたちに伝えたいと考えて国語の教師になったのです。

そこまで話したところで、その人は、その授業では上手に読むことに失敗しただけで、言葉の大切さ、美しさを伝えることに失敗したわけではないと気づきました。

この方の気づきから、私は、目の前の失敗や成功に目を奪われると、本来自分がしたかったことを忘れてしまいがちになるということを教えられたと思いました。

明後日からは、新しい年が始まります。

皆さんも、ご自分が大事だと考えていることをもう一度確認して、それを実現するために進んでいってください。

 

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