先日、ある新聞で認知行動療法を紹介する記事を読みました。
しかし、そのなかの認知行動療法の考え方の例が、よく出会う誤解を含んでいたのでここで紹介することにします。
その記事では、認知行動療法は、「柔軟な思考をするように促す」アプローチだと書かれていました。
そして、その例として、同僚に食事に誘われなかった場面が取り上げられています。
記事は次のように書いています。
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うつ病の患者では、同僚に食事に誘われなかった理由を「嫌われている」と思い込むのではなく「仕事が忙しいので気を使ったのでは」などと柔軟な思考をするよう促す。
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たしかに、認知行動療法は柔軟に考えられるように手助けしていきます。
しかし、柔軟に考えるということは、単にマイナス思考をプラス思考に変えることではありません。
柔軟というのは、ひとつの可能性に縛られずに、いろいろな可能性を考えられるということです。
それには、まず現実に目を向けて、それをありのままに受け入れることから始めます。
現実をありのままに受け入れるアプローチのことを、専門的にはアクセプタンスと呼んだりします。
そのように現実を俯瞰(ふかん)する力を認知行動療法はとても大事にします。
そのうえで、問題があれば、その問題にきちんと向き合い、対処するようにしていくのです。
さて、くだんの記事ですが、同僚に食事に誘われなかった理由として、同僚から嫌われているからかもしれませんし、同僚が気を遣ったからかもしれません。
どちらも仮説にしか過ぎないのですから、まずは現実を確認する必要があります。
そのときもうひとつ大事なことは、その同僚とどのような関係を築いていきたいと、自分が考えているかです。
まさにこれが、先週紹介した「大目標」になります。
その大目標を意識できて、はじめて、同僚から食事に誘われなかった問題にどう対処するかという小目標への取り組み方も見えてきます。