今回は、私が開催しているケース検討会で話題になった、「気分転換」と「回避行動」の違いについて書くことにします。
ケース検討会というのは、実践的な認知行動療法を勉強したいと考えている専門家の要望に応えて、ストレスマネジメントネットワークという組織で、実際の面接で困ったことや疑問に思ったことを少人数で話し合い、理解を深める目的で開いているものです。
そのなかで、職場で仕事がうまくいかなかったとき、帰りに一駅分早足で歩いて気分転換をしているという患者さんのことが話題になりました。
これはなかなか良い気分転換法だということで、みんなの意見は一致しました。
仕事だけではなく、勉強や部活など、いろいろな場面で使えそうです。
ところが、ある参加者から、「そこで気分を変えてしまうと、仕事の失敗を次に生かすことができないのではないか」という質問が出ました。
たしかに、その通りです。
いくら気持ちを切りかえても、仕事がうまくいかなかったという事実は変わりません。
その事実から目を逸らしてしまうと、また同じ失敗を繰り返すことになりかねません。
これが回避行動で、問題から逃げてしまうと、せっかくの経験を次に生かすことができません。
経験を活かすためには、少しつらくても事実は事実として受け止める勇気が必要です。
何が良くなかったのか、どのようにすればうまくいくようになるのか、きちんと考えて対処しなければなりません。
ただ、きちんと受け止めなくてはならないと頭ではわかっていても、あれこれ考えるだけで、良い対処法が頭に浮かばないこともあるでしょう。
うまくいかなかったと考えて、こころに急ブレーキがかかって、先に進めなくなるのです。
そうなると、頭の中で考えが空回りして、良いアイディアが浮かんできません。
そうしたときには、無理に考えようとしないで、ちょっと頭を一休みさせるようにする方がよいでしょう。
まさに「頭を冷やす」のです。
このようなときには、気分転換が役に立ちます。
気分転換をして、熱くなった頭を冷やすと、意外と良いアイディアが浮かんでくることがあります。
うまくいかないことがあって考え込んでいるときには、失敗を次に生かせるようなアイディアが浮かびそうであれば逃げずにそこで頑張り、頭が空回りして先に進めないようなときには気分転換をするようにしてみるとよいでしょう。
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◆大野裕先生講演会情報
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【1】
生きる! を支える市民講演会
こころの力を育てるコツ
日時:平成29年9月3日(日)13:30~15:30(開場13:00)
会場:静岡県コンベンションアーツセンター「グランシップ」中ホール
●詳細や申し込み方法については、下記URLリンク先をご覧ください。
http://www.shizu-coco.net/news/2017/07/post-70.html
【2】
平成29年度メンタルヘルス講演会
「うつ病に効く処方箋~うつ病の正しい知識と対処法~」
日時:2017年9月22日(金) 14:00開演
会場:ウェスタ川越 多目的ホール 全面
●詳細や申し込み方法については、下記URLリンク先をご覧ください。
http://www.westa-kawagoe.jp/event/detail.html?id=822
【3】
第51回日本作業療法学会
市民公開講座「日々の生活にいかす簡易型認知行動療法」
日時:2017年9月24日(日)10:40~12:10
会場:メイン会場(ホールC)
●詳細や申し込み方法については、下記URLリンク先をご覧ください。
http://web.apollon.nta.co.jp/ot51/program.html