ある人から、不眠への対処について相談されました。
その方が睡眠のことを気にするようになったのは、あるとき、思いがけずなかなか寝つけず焦りの気持ちを感じたことがきっかけだったようです。
それをきっかけに、いざ寝ようとすると、「寝つけるだろうか」という不安が襲ってくるようになったそうです。
ところが、よく話をうかがうと、実際は眠れているといいます。
おそらくこれは、睡眠自体の問題というよりは、不眠に対する恐怖ないしは不安が強くなっている状態でしょう。
その不安が強くなると、「不眠恐怖」と呼ばれたりします。
じつは、こうした体験をしている人は少なくありません。
私も、そんなに強くはないのですが、同じような不安を感じることがあります。
床に入ろうとしたときに、いつもより頭がさえているように思えて、こんな状態でうまく眠れるかなと不安な気持ちになるのです。
そうしたとき私は、眠れなくても良いからと考えてまず床に入ってみるようにします。
そして、床のなかでゆっくりと息をしながら、ボンヤリと時間を過ごすようにします。
そうすると意外と眠れるものです。
そのときには、もし時間が経っても眠れなければ床から出て、少し時間を過ごせばよいと考えるようにします。
そうすると気持ちが落ち着いてきます。
そのときに、「眠れなかったらどうしよう」と、あれこれ良くない結果を想像しないように気をつけるようにします。
良くない結果を想像すれば、当然緊張が高まります。
そうすると眠れなくなる可能性が高くなります。
睡眠の大きな目的は、次の日に活動するエネルギーを蓄えるところにあります。
もし一晩眠れなかったとしても、次の日、私たちはなんとか活動できるものです。
それで疲れがたまれば、自然に眠れるようになります。
私たちはもっと自分の身体を信じても良いのだと思います。
私たちの身体は精密機械ではないので、いつも思い通りに動くとは限りません。
思い通りに行かないことが少なくないのですが、でもいつの間にかもとに戻っています。
そうした自分の身体を信じて、流れに身を任せることも大事です。
そうしたときには、不安に対処するためのスキルが役に立ちます。
不安の場面に段階的に身を置いて少しずつ慣れていき、大丈夫だという考えに切りかえることで不安を和らげていく方法です。
専門的にはエクスポージャー(暴露)と呼ばれる方法ですが、もしその時に緊張が強すぎる場合には、「こころのスキルアップ・トレーニング」サイト(※下記参照)の「漸進的筋弛緩法」や「マインドフルネス」を使って緊張を和らげるようにします。
もし、そうした方法を使ってもうまくいかないときには、睡眠を専門にしている医療機関を受診するのもひとつの方法です。
(※)「こころのスキルアップ・トレーニング」サイト
https://www.cbtjp.net