今回は、予測可能性バイアスについて紹介することから話を始めたいと思います。
予測可能性バイアスという言葉を聞いたことがない方も多いと思いますが、これは、印象に残る体験ほど記憶に残って、そうしたことがよく起こるかのように錯覚してしまう心理的現象を指す言葉です。
そのひとつの例として、ピンチに強いスポーツ選手というイメージがあります。
野球でもサッカーでも、ピンチになればなるほど力を発揮する選手がいます。
いつもの場面よりも、ピンチの場面の方が力を出せるように思えるプロスポーツ選手を思い出すことができるでしょう。
ところが、本当にこうした選手がいるかというと、実際は、そのようにピンチの方が力を発揮できる選手など存在していないのです。
過去のデータを調べてみると、どのように優れた選手でも、ピンチになるといつものような実力を発揮できなくなっていることがわかります。
それなのに私たちがなぜピンチに強い選手がいるかのように思うかというと、ピンチの場面で活躍したイメージが私たちの記憶のなかに残っているからです。
ピンチの場面で何とかして欲しいと思い入れを持って期待するために、そこで結果を出すと私たちの記憶に鮮明に残ることになり、いかにもピンチでいつも以上の力を出しているかのように思ってしまうことになります。
それが予測可能性バイアスと呼ばれている現象です。
だれでも、ピンチの場面などストレスがかかる状況では緊張して、思うような動きができなくなるものです。
それは超一流と言われるプロスポーツ選手でも同じなのです。
だからこそ、自然に体が動くように絶えず練習を積み重ねることになります。
あれこれ考えると体の動きが不自然になるので、考えないですむように体を作っていくのです。
あるゴルフのコーチが、練習でクラブを1万回振れば自然に体が動くようになってくると言っていました。
そうすれば、体の自然な動きにまかせることができるようになるというのです。
こころの動きも同じです。
こころトークで紹介している認知行動療法のスキルも、いろいろな場面で繰り返し使っているうちに、自然にできるようになってくるはずです。