先日、アレン・フランセス先生と、愛媛県の南部の愛南町にある御荘診療所に行ってきました。
この診療所は、精神医学の領域では超がつくほどの先進的な試みを実践している医療機関です。
御荘診療所は、以前は150人くらいの患者さんが入院している精神科の病院でしたが、10年くらい前から、病院を閉じる準備を始めました。
入院していた患者さんたちが地域で生活できるように、工夫を重ねていったのです。
これは精神医療では画期的な挑戦です。
これまで、精神疾患を持った患者さんは、精神的に不安定になると治療のために入院するのが一般的でした。
たしかに、ストレスの強い環境から一時期離れることは、気持ちを安定させるのに役立ちます。
その一方で、入院をすると一般社会との距離が開いて、復帰するのが難しくなり、長期に入院する人が増えてきました。
そうすると、一般社会に戻って生活するのがますます難しくなります。
どうせ何をしてもダメだという悲観的認知が共有され、ますます復帰できなくなるという悪循環が起こりやすくなります。
そうした状況は精神症状を悪化させたり慢性化させたりすることになります。
そうした状況を打ち破ろうと、御荘病院の長野敏宏院長を中心に、病院と地域が一体になって地域おこしの活動が始まりました。
精神疾患を持った人が、地域の住民と一緒になって椎茸栽培やアマゴの養殖、観葉植物のレンタル、温泉経営など多くの事業を展開していったのです。
日本発のアボカド産地を目指す活動も行い、千疋屋に認められるまでになっています。
このように地域おこしを行うことで、精神疾患を持つ人が地域で生活ができるようになり、とうとう2年前、病院を閉鎖することができました。
まだ活動は途中ですが、このように環境を作っていくことはとても大切です。
私たちは様々に環境の影響を受けますが、このように環境を作っていくこともできます。
あきらめるのではなく、少しでも自分に役に立つ環境を粘り強く作り出していくことで自分らしく生きていけるようになれることを愛南町の試みは示しています。