首都圏では、2週間延長されることになった緊急事態宣言が解除されることになりましたが、新型コロナウイルス感染症検査で陽性になった人の数が下げ止まっています。
そのひとつの理由として、緊急事態宣言をいくら続けても、陽性者が減少しない現実にうんざりして、新型コロナウイルス感染症拡大前の行動パターンに戻っている人が少なくないからだともいわれています。
この様子を見ていると、50年以上前に心理学者のマーティン・セリグマン博士が報告した学習性無力感の研究を思い出します。
学習性無力感というのは、「どうせ何をしてもダメだ」といった無力感を学習してしまうと、それ以上、工夫をしたり頑張ったりしなくなるということを実証した研究です。
以前にも「こころトーク」で紹介したことがありますが、動けなくした犬の脚に電流を流す装置を作って、ボタンを押せば電流を止められる群と、いくらボタンを押しても止められない群とを作ります。
いくらボタンを押しても電流を止められない犬は、「どうせ何をしてもダメだ」という無力感を学習することになるのですが、今度は両方の犬を床において、床に電流を流します。
そうすると、ボタンを押せば電流を止められるということを学習した犬は、そうした扱いを受けなかった犬と同じように、その床の上から逃げ出します。
その反応は当然のように思いますが、じつは、いくらボタンを押しても電流を止められず学習性無力の状態になっている犬は、その床の上から動こうとしないのです。
その結果、その犬は、「やっぱりダメだった」と考えることになるのだろうと思うのですが、すでにおわかりのように、「やっぱりダメだった」のではなく、「逃げないから」ダメだったのです。
私たちは、このように、何度も失敗すると、「どうせダメだ」「やっぱりダメだった」という「どうせ-やっぱり」思考に縛られて、だんだん意欲が無くなってきます。
こうしたときには、ダメだった部分だけでなく、うまくいった部分にも目を向けることが役に立ちます。
そのうえで、ダメだった部分については、どのようにすれば少しでも自分の期待に近づけるかを具体的に考えていくようにするとよいでしょう。
新型コロナウイルス感染症でも、同じような心の持ち方ができると、良い方に行動を変えていくことができるようになるでしょう。