こころトーク

2021.08.27

第309回 「米国留学と『インポスター症候群』」

先日、2001年からほぼ毎週書き続けている日本経済新聞のコラム「こころの健康学」の編集者から、「インポスター症候群」について問い合わせがありました。

他の部署の担当者から問い合わせがあり、私に尋ねたといいます。

「インポスター症候群」と聞いて、私はちょっと嬉しく、とても懐かしい気持ちになりました。

じつは、私が米国留学中に見つけて『インポスター現象』というタイトルで筑摩書房から出版した、まさにその本がインポスター症候群を紹介したものだったからです。

それがなぜちょっと嬉しく、とても懐かしかったのか、そのことを今回のこころトークで紹介することにします。

これまでいろいろなところで書いてきましたが、留学中は経済的にとても苦しい生活を送っていました。

そうしたとき、米国の書店の店頭で見つけた本が『インポスター現象』です。

タイム誌でも取り上げられて話題になっていたこともあって、日本語訳を出して売上が伸びて印税が入れば、少しは生活が楽になるのではないかと考えました。

そこで、留学に際してお世話になった恩師の小此木啓吾先生にお願いをして、出版社を紹介してもらい、出版にこぎつけることができました。

ただ、出版社としては無名の私が翻訳したというのでは本が売れないと判断したのか、小此木先生も翻訳者として名前を連ねるなら出版しても良いということでした。

私としては、生活費の助けになれば良いので、どのような形でも出版してほしいとお願いしました。

それ以上に、小此木先生に名前を並べてもらえるなら、それに越したことはないと考えました。

その後、頑張って翻訳をして出版することができたのですが、じつは生活の助けになるほどには売れませんでした。

それはガッカリだったのですが、でも、小此木先生に支えてもらえているという安心感は、経済的な潤いよりもはるかに大きい心の支えになりました。

人の支えの大切さを感じることができました。

その本の内容が、30年以上経った今、米国で注目をされていると聞いて、嬉しく懐かしくなって体験を書いているうちに紙面がつきてしまいました。

インポスター症候群については、次回の「こころトーク」で説明することにします。