こころトーク

2021.11.12

第320回 「認知行動療法の本質を示すアーロン・ベック先生の言葉」

先週も書きましたが、認知行動療法の創始者のアーロン・ベック先生の訃報に接してから、ベック先生のもとで過ごしたときのことをあれこれ思い出し、懐かしい気持ちに浸っています。

留学先のコーネル大学医学部でたまたま出会ったアレン・フランセス先生の勧めで、認知行動療法の勉強もすることになり、ベック先生の勉強会に出席することになりました。

毎週水曜日に、私が住んでいたニューヨーク市郊外から、ベック先生が働いていたペンシルベニア大学のあるフィラデルフィアまで、片道3時間かけて往復して勉強を続けていました。

そろそろ日本に帰国しようかと考えていたとき、ベック先生に、その前にフィラデルフィアに住んで認知行動療法をもっと勉強したらどうかと勧めていただきました。

そのときにかけていただいた言葉はいまでもよく覚えています。

「肌で体験することが大事だ」という言葉です。

これは、まさに認知行動療法の本質を表した言葉です。

認知行動療法は、考えを頭のなかで切りかえる言葉遊びのアプローチではありません。

実際に行動してみて、肌で体験して、そして考えが変わり、工夫ができるようになる。

待っているだけでは考えは変わりません。

行動して肌で確かめることで、新しい考えが生まれ、新しい未来が生まれてきます。

じつは、私のアメリカ留学も思い切って行動したからこそ実現できました。

一般の留学のように大学同士の約束があったわけではなく、知人のツテを頼って、とりあえず単身でコーネル大学に飛び込みました。

最初は、観光ビザでした。

それなのにすぐに家族を呼び寄せ、観光ビザが切れる直前に単身で密かにカナダに出国し、就労ビザに切りかえるという、離れ業のようなことまでしました。

ニューヨークで医療を実践できる免許を取得するのにも半年以上かかりました。

アメリカで勉強したいという思いがそれだけ強かったのですが、思い切って行動したことで、アレン・フランセス先生に出会って、アメリカ精神医学会の「精神疾患の診断・統計マニュアル第4版」の作成に携わることができました。

ベック先生のもとで認知行動療法を学ぶこともできました。

夢を求めて思い切って行動することで、多くのことを肌で体験し成長することの大切さを、いまさらながら感じています。

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