こころトーク

2021.12.17

第325回 「多くの人を惹きつけるアーロン・ベック先生の魅力」

米国東海岸の時間で12月8日正午から、アーロン・ベック先生の追悼式が開かれました。

日本時間では12月9日午前2時になります。

私も眠い目をこすりながら、ズーム(Zoom)で参加しました。

いつも思うのですが、ズームなどのオンライン会議ツールが使われるようになって、ずいぶん便利になりました。

ドラえもんの「どこでもドア」のように、日本にいても米国東海岸に瞬間移動できて、世界中の人たちと交流できます。

さて、アーロン・ベック先生にゆかりの人たちが思い出を語っているのを聞きながら、私は、ベック先生とふれあった人たちがここまで惹かれるのは、ベック先生の好奇心と温かい人間性、そして科学的な思考が、どれも人並み外れて優れていたからだろうと考えていました。

ベック先生は好奇心の塊のような人でした。

私が最初に会ったときも私の背景について色々と質問されていましたが、そうした好奇心が、人のこころへの関心につながったのでしょう。

そうした好奇心が、それまでの治療論にとらわれない認知行動療法の着想と発展につながったのですが、それは人間関係でも大切な役割を果たします。

私がそうでしたが、そのように自分に関心を持って質問をされると、自分が受け入れられたようで嬉しくなります。

一人ではないと感じて、孤立感が和らぎます。

そうした思いになれたのは、ベック先生が人間的な温かさを感じさせる人だったからでもあります。

ベック先生は、一緒にいるとホッとできる温かい雰囲気に加えて、人を楽しく笑わせるお茶目な魅力もありました。

追悼会でクリス・パデスキー先生は、パデスキー先生の研修会でのエピソードを紹介していました。

1970年代の後半のことですが、ベック先生は、パデスキー先生が講義で使っているスクリーンの後ろにそっと隠れていて、参加者からの質問にパデスキー先生が「ベック先生がいらっしゃったら聞いてみたいですね」と言ったその瞬間にスクリーンを上げて現れて、参加者を驚かしたそうです。

もちろん、こうした人間的な魅力に加えて、科学的な視点を持っていたこともベック先生の魅力ですが、このことについては日をあらためて書くことにします。

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