精神疾患を持つ人や家族が中心になって立ち上げ、運営しているコンボというNPO法人があります。
そのコンボが毎月、「こころの元気+」という雑誌を発刊していて、今年の2月で180号が発行されました。
計算すると15年を超えたことになりますが、その創刊号から毎月、私は認知行動療法について寄稿させていただいています。
そうは言っても、認知行動療法についての基本的な解説ばかりを書き続けることはできません。
そこで最近では、「自分でできる認知行動療法」というタイトルで、そのときどきの特集テーマに合わせた認知行動療法的なヒントを書くようにしています。
最近書いた7月号の特集テーマは「家族まるごと」で、家族に関係することを何でも取り上げる内容になっています。
そこで私は今回、創始者のアーロン・ベック先生の一般書「Love is Never Enough」をもとに夫婦関係について書いてみました。
原書は私がアメリカ留学をしていた40年近く前に出版されていて、最近、『愛はすべてか』(金剛出版)というタイトルで日本語版が出版されました。
タイトルからわかるように、夫婦として結婚生活を続けるためには、恋愛時代のような愛情だけでは不十分で、お互いに気持ちや考えを伝えあい、理解しあうことが大事だということが書かれています。
恋愛時代は「あばたもえくぼ」に見えますが、結婚して一緒に生活するようになると、「あばた」はもう「えくぼ」には見えません。
場合によっては、「えくぼ」さえも目に入らなくなったり、「あばた」ばかりに目が向くようになったりして、二人の関係がギクシャクしてきます。
まさに、認知の偏りが生まれてきて、相手の良くない面ばかりが気になって、ますます関係がこじれていってしまいます。
そうした関係を変えていくためには、お互いの認知を変えていく必要があるのですが、そのときに大事になるのがコミュニケーションです。
「親しいのだから気持ちをわかってくれていて当然だ」と考えるのではなく、積極的にお互いの溝を埋める必要があります。
これは、夫婦関係だけではなく、家族や友人、職場や学校など、あらゆる場面で良い人間関係を作っていくために大切なこころの姿勢です。