認知行動療法は考え方を変えるアプローチだと言われることがよくあります。
この表現は正しくないと、私は考えています。
認知行動療法は、考え方を変えるアプローチではなく、考え方が変わるアプローチだからです。
考え方を「変える」と、考え方が「変わる」とで、何が違うのでしょうか。
考え方を変えようとすると、いろいろと無理が出てきます。
まず、今の考えが悪いと責めている自分があります。
他人からでも自分からでも、そのように責められるとつらくなってきます。
責められても、そのように考えてしまったのは事実ですからどうしようもありません。
そもそも、思いがけないことに出合ったときに良くない可能性を考えるのは、自然なこころの動きで、自分の身を守ろうとする自己防衛反応です。
考えを変えなくてはいけないと思って考えると、自分を守るこころの力を削いでしまうことにもなりかねません。
ですから、そのときの考えは考えとして受け止める必要があります。
そのうえで、その考えが適切かどうかを確認する作業が必要になります。
つらい気持ちが強くなっているときには、考えが現実以上に極端になっていることが多いからです。
そのために、勇気を持って、現実に何が起きているかをもう一度確認するようにします。
勇気を持ってと書いたのは、良くない可能性を考えたとき、その考えが当たっていることもあるからです。
それを確認するのは勇気がいります。
だからといって何もしないでいると、悲観的な考えが加速して、どんどん良くない可能性を考えるようになってきます。
現実を確認できないダメな自分が目に入って、さらにつらくなってきます。
そうしたときに、勇気を持って現実に目を向けることができれば、できた自分が目に入ってきます。
ちょっと自信が沸いてきます。
きちんと現実に目を向けると、現実に即した適切な判断ができるようにもなってきます。
このようにして自然に考えが変わって現実に即した考え方ができるように手助けしていくのが、認知行動療法です。