前回、現実に目を向けられるようになると、自然に考えが変わっていくと書きました。
悩みが強くなっているときには、その気持ちに縛られていて、現実に目を向けられなくなっているからです。
そうすると、自由な発想ができなくなります。
気持ちが揺れているときには、その気持ちに合うような事実にばかり目が向いてしまいます。
つらい気持ちになったときには、目を閉じてゆっくり息をしてみてください。
そのようにして、自分の気持ちからちょっと距離を置いて現実に目を向けると、新しい気づきが生まれてくることがよくあります。
これを、私は、「こころの捜し物」と呼んでいます。
それは、気持ちが動揺したときに、ちょっと気持ちを落ち着けて、本当に大事なものを捜すこころの働きです。
私は捜し物が苦手で、なかなか見つけられないことがあります。
一生懸命になればなるほど、見つけられなくなります。
時間ばかりが過ぎていって、焦る気持ちが強くなります。
そうしたときに、ちょっと別のことをしてから、もう一度探してみると簡単に見つけられることがよくあります。
ちょっとした間を取ることで、脳がリセットされて、全体に目が向くようになるからでしょう。
自分だけで頑張りすぎずに、家族や他の人に頼んで探してもらうと見つかることも少なくありません。
ちょっとした間を取ることにしても、他の人に頼んでみることにしても、それが自分を思い込みの世界から解放してくれます。
認知行動療法の創始者のアーロン・T・ベック先生がディスタンシング、つまり距離を取ると表現した対応です。
自分が置かれている状況からちょっと距離を置いて全体を俯瞰できると、それまで目に入っていなかったものが見えるようになってきます。
過去や将来にとらわれずに今あるものに目を向けるマインドフルネスの効果も同じメカニズムです。
こころが疲れているときには、日常の捜し物と同じように、ちょっと自分から距離を置いて全体に目を向けるようにしてみましょう。
新しい気づきが生まれてくるはずです。