子どもや高齢者、発達障害を持つ人など、論理的に考えるのが苦手な人に認知行動療法が使えるかという質問を受けることは少なくありません。
認知行動療法が論理的に考えられるように手助けするアプローチだと誤解されていることが、大きな原因のようです。
だから、論理的に考えるのが苦手な人たちに認知行動療法は無理なのではないかと考えるのでしょう。
しかし、これまで繰り返し書いてきたように、認知行動療法は考えを変えるアプローチではありません。
新しい体験を積み重ねることで自然に考えが変わるように手助けしていくアプローチです。
体験を通した気づきは、年齢にかかわらず誰でもできることです。
精神的な不調に陥っているかどうかにかかわらず、できることでもあります。
その意味では、認知行動療法を提供する人の認知の柔軟性が必要なアプローチなのです。
もちろんそのときには、手助けしている相手の人にわかるように伝えていくことが大切になります。
『子どものための認知療法練習帳』(創元社)という訳本があります。
ずいぶん前に出版された本ですが、身近なたとえを使ってわかりやすく説明されているので、紹介することがよくあります。
問題解決技法については、落とし穴を使って説明しています。
問題を解決できないのは、突然落とし穴に入ってしまってまわりが見えなくなった状態だというのです。
そう言われると、なるほどと思います。
落とし穴に落ちてまわりが見えなくなると、自分の居場所がわからなくなって、どのように行動すれば良いか戸惑ってしまいます。
そうしたときには、あわてないでちょっと穴から顔を出してまわりを見回すのが良いと、この本では書かれています。
そのようにしてまわりが見えるようになれば、どのように対応すれば良いか、解決策がいろいろと浮かんでくるはずだというのです。
こうしたたとえであれば、小さい子どもでもわかります。
このようにわかりやすいたとえを覚えておいて、生活のなかで認知行動療法の考え方を使うようにすると、ずいぶん生きやすくなってくるはずです。