最近、私は、やけに忙しくなってきています。
おそらく、新型コロナのためにオンライン中心だった講演会や会議が対面で行われるようになったことが影響しているのでしょう。
先日も講演で博多に呼んでいただいたのですが、現地で直接言葉を交わす人間的な温もりは、オンラインでは感じられないものです。
最近アメリカで話題になっているラビット・イフェクト(ウサギ効果)という言葉があります。
これは、1980年代後半に報告されて注目されるようになった研究成果を表す言葉です。
その研究は、脂肪分の高い食事と心臓疾患との関係を調べるために行われました。
脂肪分の高い食事をとると心臓疾患にかかりやすくなることは、よく知られています。
そのことを検証するために、ウサギに脂肪分の高い食事を食べさせて、心臓の健康に好ましくない影響を与えるかどうかを調べたのです。
その結果は、予想通り、脂肪分の高い食事と心臓疾患の発症とは関係しているというものでした。
ところが、不思議なことに、脂肪分の高い食事をとっても心臓疾患にかからない、健康なウサギの一群が存在していました。
不思議に思った研究者は、その原因を調べました。
その結果、健康なグループのウサギの担当者がウサギを抱きあげたり、なでたり、話しかけたりしていることがわかったのです。
担当者から愛情を注がれていたウサギは、脂肪分の多い食事を食べていても健康だったのです。
こうした心理的な安心感は、心臓疾患のような体の問題だけではなく、心の不調を防ぐ効果があることも知られています。
親しい人や地域と意味のある交流ができている人はうつ病になりにくいという研究報告は少なくありません。
コロナ禍のためにこれまで私たちは孤立しがちな生活を送ってきました。
しかし、心身ともに健康に生きていくために、安心できる人間的交流を続けられる工夫をしていく時期にきているように思います。