先週に紹介したジュディス・ベック先生の講演会とワークショップですが、事前に送られてきたパワーポイントの資料を読んで、その主要なコンセプトは、少し古い表現になりますが「温故知新」だと思いました。
午前中の1時間の講演ではアーロン・ベック先生が認知行動療法を着想し、苦労しながら広めていって、最終的にリカバリーに注目した認知療法にいたる軌跡を話すことになっています。
午後には3時間かけて、様々な困難に出会ったときの認知行動療法を使った対処法を動画やロールプレイを交えながら具体的に説明したいと連絡がありました。
こうした方法について一流の治療者の話を聞くのは、専門家だけでなく、一般の人たちにもきっと役に立つと考えて、多くの人に紹介しているところです。
英語の苦手な人のために、プロの通訳者に頼んで、逐次通訳をしてもらうことにしました。
今回の講演のなかで興味深いのは、最近の認知行動療法は、従来の認知行動療法のようにネガティブな考えに目を向けるだけではなくなっている点です。
もちろんネガティブな考えを意識することは大事です。
しかし、だからと言って、無理に考えを変えようとしても変わりません。
アーロン・ベック先生が肌で体験することが大事だと言っていますが、認知行動療法では、体験を通して気づきを広げることで、自然に考えが変わってくるようにしていきます。
良くない可能性ばかりを考えて身構えていた状態から、新しい可能性に目を向け、それを実現するために試しに行動してみます。
もしそれがうまくいけば、良くない可能性を考えることが必ずしも当たっていないことがわかります。
もちろん、うまくいかないこともあります。
そうすれば何が問題で、どのようにすればうまくいく可能性があるかのヒントが手に入ります。
ここまでは従来の認知行動療法ですが、最近の認知行動療法では、ポジティブな体験にも注目するようになっています。
良い体験をすれば気持ちが軽くなります。
その体験を振り返ることで、何がよかったかがわかりますし、自分の力もわかります。
そうすればさらに先に進む力がわいてきて、自分らしい生活を送れるようになってきます。
こうしたことについても、ジュディス・ベック先生が説明するだろうと期待しています。