今回は、行動活性化と「こころの栄養」について書くことにします。
行動活性化というのは、うつ病の認知行動療法でよく使われる技法のひとつですが、誤解されることの多い方法でもあります。
認知行動療法のことをよく知っている人でも、行動活性化について、行動を活性化することだと間違って理解していることが少なくありません。
そのために、うつ病の人に、いろいろな行動を提案して活動するように勧めている場面を見かけます。
しかし、うつ病の人はこころの元気がなくなっているのですから、行動をするように勧められても、簡単に動くことはできません。
場合によっては、身体を動かすように勧められたのにできない自分を責めて、さらにつらい気持ちになってしまうことさえあります。
行動活性化というのは、行動を活性化する方法ではなく、行動を通してこころを活性化する方法です。
私たち誰もが経験していることですが、気持ちが落ち込んでいるときに何もしないでいるとよくないことばかり考えるようになります。
過去の失敗を思い出して落ち込んだり、これから先に起こる可能性のある失敗を考えて不安になったりします。
先週紹介した「グルグル思考」が始まってしまって、ますます身動きが取れなくなってしまうのです。
その結果、何もできない自分を責めて、さらにつらさが増すことになります。
そうしたときには、いまの生活の中で少しでも気持ちがラクになる活動を見つけて増やしていくようにするのが役に立ちます。
これが行動活性化です。
それを、奈良にある精神科病院ハートランドしぎさんの徳山明広院長は「こころの栄養になる活動」と表現しています。
私が尊敬する臨床家だけあって、行動活性化のポイントを的確に捉えたわかりやすい表現で感心しました。
徳山先生が、日々の診療の中で、こころを元気にする栄養のもとを一緒に見つけていこうと患者さんに語りかけている様子が目に浮かびます。
皆さんも、自分のこころの栄養になる活動を見つけていっていただければと思います。