ジュディス・ベック先生の講演会&ワークショップが終わりました。
予想以上に多くの方に参加していただくことができて、とてもうれしく思いました。
講演会では、認知行動療法の創始者のアーロン・ベック先生の一生を振り返りながら、認知行動療法の発展について話していただきました。
アーロン・ベック先生は、85歳の時に、それまでおもにネガティブな思考に焦点を当ててきた認知行動療法を、よりポジティブな面に目を向ける方向に、大きく舵を切りました。
それがリカバリーを目指す認知行動療法です。
リカバリーを目指すと言っても、単に回復を目指すという意味ではありません。
リカバリーというのは、いろいろな問題を抱えながら、それでも自分らしい生き方ができるようなこころの状態になることを意味します。
誰でも、何かしらの問題は抱えています。
何度か書いてきましたが、アーロン・ベック先生は晩年、緑内障のために目が見えなくなりました。
車椅子の生活になり、最後は寝たきりになりました。
でも、頭はしっかりしているので人の役に立ちたいと考えて、百歳で亡くなる2日前まで仕事を続けました。
何ができないかではなく、何ができるかに目を向け続けたのです。
さて、そのアーロン・ベック先生が、伝統的な認知行動療法から、リカバリーを目指す認知行動療法に舵を切ったのは、先にも書いたように85歳の時です。
フィラデルフィア市の精神保健の担当部局から、重い精神疾患を持った人のために認知行動療法を活用する方法を考えてほしいと依頼されたのがきっかけです。
20年、30年と精神科病院に入院し続けている人たちが、アメリカにもいます。
そうした人たちは、どうせ自分は退院して社会生活を送ることなどできないとあきらめています。
でも、できないかどうかは、やってみないとわかりません。
それなのに、できないと決めつけてしまっていては、やってみようという気力さえわいてきません。
そこでアーロン・ベック先生たちは、やってみようという気力を出せる方法を考えていきました。
それがCT-Rと呼ばれるリカバリーを目指す認知行動療法で、次回もその話を続けることにします。