親しい人から悩みの相談を受けたときにどのように対応すれば良いかと質問されることがよくあります。
親身になりすぎると一緒に悩んで心が揺れてしまうし、だからといって素っ気なくしたのでは申し訳ないという気持ちがします。
そのような質問に対して、私は、そのとき相手の人が感じている気持ちを否定しないようにすることと、自分だったらどうするかを心のなかで考えてみるように勧めています。
まず、相手の人の気持ちを否定しないことから説明していくことにします。
親しい人が落ち込んだり不安になったりしてつらくなっているのを見ていると、自分もまたつらくなってきます。
そのために、そんなに思いつめないようにと、つい言ってしまうこともあります。
しかし、それではその人の気持ちを否定してしまうことになります。
せっかくつらい気持ちを打ち明けたのに否定されてしまうと、その人はますますつらくなってしまいます。
それに、その人がつらい気持ちになっているのは、それなりの理由があるはずです。
それを否定されてしまうと、その人はもっとつらい気持ちになってしまいます。
こころの痛みにしても、体の痛みにしても、痛みには意味があります。
こころや体の痛みは、何かはわからないが、注意をしないといけないことが起きているということを伝える警報です。
気持ちが沈み込むのは、何か大切なものをなくしたのではないかと、こころが私たちに伝えているからです。
不安になるのは、危険が迫っているかもしれないということを、こころが私たちに伝えているときです。
腹が立つのは、ひどいことをされたと、こころが判断したからです。
そのようなときに、気にしないようにと言ってしまうのは、その警報を切るようにと言うのと同じです。
そうではなく、日常の生活で警報が鳴っているときに、何か危険なことが起きていないかどうかを確認するのと同じように、こころの警報器が鳴ったときには、現実に何か問題が起きていないかを一緒に確認するようにしてください。
その結果、問題がなければそれでいいでしょうし、問題があればあわてずしっかり対応するようにします。