こころトーク

2023.12.08

第428回 「変化を阻むあきらめの気持ち」

先週紹介したように、アスピレーション、つまり自分の夢や生きる目的を意識することができれば、ストレスを感じるような体験をしても、動揺したこころを整えて自分らしい生き方ができるようになってきます。

しかし、そうは言っても、ストレスを感じているときに自分の夢を意識することなどできないと考える人は、少なくないでしょう。

たしかに、その通りです。

だからと言って、あきらめてしまうと、それ以上の変化を起こすことはできません。

先週紹介した、ポジティブサイコロジーの提唱者のマーティン・セリグマン先生は、学習性無力感の研究でもよく知られています。

学習性無力感というのは、苦痛な状況が続いて、自分の力ではそれを変えることができないと考えるようになると、あきらめの気持ちが強くなり、本来持っている力を発揮することさえできなくなるこころの状態です。

そのことを、セリグマン先生は50年以上前、犬を使った実験で発見しました。

その実験では、犬を3つのグループに分けます。

ひとつのグループの犬には何もしません。

もうひとつのグループの犬の脚には、電流が流れる装置をつけ、電流を流します。

犬は当然驚くのですが、目の前にあるボタンを押すと電流を止めることができます。

その結果、その犬は、苦痛な体験をしても、自分でその苦痛から逃げることができることがわかります。

第3のグループの犬は、同じように電流が流れる装置を脚に取り付けられます。

その犬も、第2のグループの犬と同様に目の前にボタンがあるのですが、そのボタンをいくら押しても電流を止めることができません。

その犬は、いくら努力しても自分には苦痛な環境を変える力がないということを学習することになります。

その後、この3つのグループの犬を床の上に置いて、その床に電流を流してこれらの犬の行動を観察します。

そうすると、第1グループの犬だけでなく、自分で苦痛な状況を変えることができる体験をした第2グループの犬は逃げ出します。

ところが第3グループの犬は、もう動こうとしないのです。

これが学習性無力感の状態ですが、この研究については、次回、もう少し解説したいと思います。

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