こころトーク

2015.09.04

気分を変えてみませんか?

前回は、体の痛みを感じているときに、その苦痛だけではなく、痛みがあることに関連した苦悩(心理的苦痛)のために、痛みをより強く感じるようになると書きました。
 

それは、まるでスピーカーが音を増幅させて大きくするように、こころが痛みを増幅してしまうからです。
関心が向けば向くほど、痛みが強く感じられるようになるのです。
 

それに、「これ以上痛くなってはたまらない」と考えると、ちょっとした痛みの変化も見逃さないようにしようとします。
そうすると、少し痛みが強まっただけでも、大きな変化のように感じられてしまいます。
 

そうしたとき、別のことをすると痛みを紛らわせられることがあります。
少しくらいの痛みなら、自分の好きなことをしていると忘れてしまいます。

 

同じことが、こころの痛みにも当てはまります。
体の痛みと同じように、不安や恐怖、うつなどのこころの痛みは、そこに目を向ければ向けるほど強いものに感じられるようになります。
 

少し前に、認知療法を始めたアーロン・ベック先生が体験していた病気恐怖について書きました。
ベック先生は、子どもの頃にかかった病気のために生きるか死ぬかの体験をして、病気恐怖になりました。
そのために医学部に進んだのですが、そこで新しい気づきがありました。
手術室に入って怖い思いをしていても、手術の手順に集中していると、いつの間にか恐怖心がどこかに消えていってしまっていることに気づいたのです。

これは、専門的に言えば、「ディストラクション(気ぞらし)」という方法です。
こころや体の痛みを感じているときに、その痛みから一時的に目をそらすようにする方法です。
 

おそらく皆さんも、意識しないでこのような方法を使っていることがあるのではないでしょうか。
どのようなことに目を向ければ良いかは、人によって違います。
 

しかし、誰であっても、一時的に気持ちをそらせば、痛みは軽くなります。
それがうまくできれば、痛みを感じながらも自分らしい生活を送れる方法を考えることができるようになってきます。