認知行動療法は現場主義です。
これは、認知行動療法について簡単に説明してほしいと言われたときに、ふと私の口から出た言葉です。
認知行動療法を実践的に学んでほしいと考えて立ち上げた組織「ストレスマネジメントネットワーク」の基礎研修会での質問です。
研修会では、このように実践的な質問がたくさん出たおかげで、とても活気にあふれた議論をすることができました。
さて、私が認知行動療法を「現場主義」と説明した、そのココロについて説明しましょう。
認知行動療法は考え方のクセを知って、それを変えるアプローチだと説明されることがあります。
そのために、考えに目を向けて、考え方のクセを見つけるように勧める専門家もいます。
たしかに、考えに目を向けることは大事です。
それは、私たちが、ほとんど意識しないままに現実を判断し行動しているからです。
通常、私たちはそうした判断や行動を瞬時に、問題なく行っているのですが、悩んでいるときにはそれがうまくいかなくなっています。
そのときの無意識的な判断や行動に目を向けられれば、もっと楽に生活できるようになるというのが認知行動療法の基本的な発想です。
だからこそ、認知行動療法の創始者のアーロン・ベックは、患者さんが話の途中でフッと涙ぐんだときなどに、つらくなった気持ちに寄り添いながら、そのとき頭に浮かんでいる考えやイメージについて尋ねるように勧めているのです。
そのときに大事なのは、考えだけでなく現実に目を向けることです。
そうすることで、考えと現実のギャップに気づくことができます。
先日のメルマガで熊の例を出して説明したように、私たちは問題が起きたとき、よくない結果を考える傾向があります。
それは、自分を守るために必要なこころの動きです。
しかし、そう考えることで私たちは、かえって萎縮したり緊張したりして、本来持っている自分の力を発揮できなくなります。
そうしたときに考えと現実のギャップにきちんと目を向け、目の前の問題に適切に対処できるように工夫していく。
それが認知行動療法の基本的な考え方で、それを私は現実主義と表現したのです。