先週、不安と恐怖の違いについて書きました。
どちらも危険を先読みしすぎるこころの状態ですが、危険だと考える対象がはっきりしていないのが不安で、はっきりしているのが恐怖です。
不安を感じているときには何を危険だと考えているかがはっきりしていないので対応を考えることができません。
ですから、不安を和らげるためには、現実に目を向けて何が危険だと考えているのか、心配の対象をはっきりさせることが役に立ちます。
これは簡単なようで、結構大変です。
危険だと考えていることが思い過ごしだったら良いのですが、意外と当たっていることもあるからです。
しかし、当たっているかどうかは現実を見なければ判断できません。
現実に目を向けなければ、どのように対応して良いかもわかりません。
私の知り合いに、健康診断を受けない医師がいます。
健康診断に意味がないと考えているからではありません。
健康診断で何か問題が見つかると怖いと考えているから、受けないのです。
本末転倒です。
健康診断は問題があるかどうかを確認するためのものです。
もし問題がなければ、それはそれで安心です。
もし問題があれば、もちろん、その問題を解決するための手立てを考えなくてはなりません。
健康診断を受けなければ、問題を見逃してしまって、最終的に大変なことになってしまいかねません。
客観的に考えると、私の知り合いの医者はじつに不思議な行動を取っています。
しかし、こうした不思議な考えや行動は、不安を感じたときに私たちが共通してとっているパターンです。
私たちは、不安を感じると、少しでもそれを和らげたいと考えて現実から目を背けようとします。
こうした回避行動は、ほとんど意識しないで行っているのですが、その結果、かえって問題が大きくなることがあります。
自分を守ろうとする行動が、さらに自分を追いつめ、傷つけることになるのです。
それを避けるためにも、不安を感じたときには、具体的に何を心配していて、それが現実的にどの程度妥当なのかを考えることが大切です。