こころトーク

2016.06.03

第36回 「自分の力だけではどうにもできないとき」

前回は、看護と介護をテーマに、専門家に助けてもらうことの大切さについて書きました。

介護と言えば、自分で親の介護に取り組んでいた友人の大学教授のことを思い出します。

以前にもこころトークで紹介したと思いますが、忙しい研究に追われるなかで介護をするのは大変です。

当然のことながら、心身ともに疲れ果ててしまいました。

そうなると、親につらく当たるようになります。

自分で思うように動いてくれない親に腹が立つのです。

せっかく親のためにと考えて親の世話をしているのに、かえって状況は悪くなります。

彼は、自分ですべてのことをするのは無理だと気づきました。

そして、自分が研究者として活躍している姿を親が喜んでいたことを思い出して、自分の力を研究に集中することにして、介護の多くの部分を専門職に頼むことにしました。

その結果、ずいぶん気持ちが楽になり、親にも優しく接することができるようになりました。

この友人のように、自分の力だけでは問題に対処できなくなったときに意識すると役に立つポイントを三つあげてみます。

まず、第一のポイントは、ちょっと立ち止まって、自分ですべて対応できる問題かどうかを判断することです。

私たちは、自分にとって大事だと思えば思うほど、自分の力で何とかしたいと考えます。

しかし、私たちはスーパーマンではありません。

時間的にも能力的にも、できることには限りがあります。

そうだとすると、どこにどのように力を入れるか、力配分を考える必要があります。

そこで、具体的に問題を並べ、どこから取り組むか優先順位をつけることができるかどうかが、
第二のポイントになります。

もちろんそのとき、自分の力でできないことまで自分の責任だと考えないようにすることも大事です。

認知症になって介護が必要になっている親は、いくらがんばっても、介護者の思うようには動いてくれません。

それを、自分の関わり方が悪いからだと考えるとつらくなります。

熱心になればなるほど、自分の責任を感じすぎるようになります。

うまくいかなったときに、自分が悪いと考え、自分を責めるようになります。

できないことをできないと認めたくないからです。

そうしたときに、責任がどこにあるのかを考えてみて、自分が責任を持って対応しなくてはならないことを意識して、その点に絞って対応策を考えること、それが第三のポイントになります。