こころトーク

2016.09.30

第53回 「立ち止まるタイミング」

認知療法の創始者のアーロン・ベック先生は、「認知に到る王道は感情である」と言っています。

精神分析の創始者シグムンド・フロイドの「無意識に至る王道は夢である」という有名な言葉をもとに考え出した表現です。

先週、悩んでつらくなったときにはちょっと立ち止まって自分にどのような声かけをしているか確認してほしいと書いたときに、ベック先生のこの言葉を思い出しました。

それは、悩み相談を受けているとき、そのように立ち止まるタイミングがわかりにくいと相談を受けることが多いからです。

それに対する答えをベック先生の言葉から考えると、感情が大きく動いたときがそのタイミングということになります。

気持ちがひどく落ち込んだときやとても緊張したとき、腹が立ってしようがないときには、ちょっと立ち止まって考えを振り返るようにします。

ベック先生は勉強会で、「患者さんと話していて、患者さんがフッと涙ぐんだりした」ときが考えを聞くタイミングだと言っていました。

もちろんそのときに、「つらかったんですね」と気持ちに寄り添うことは大切です。

人の話を聴くときに、考えにばかりに目を向けると、相手の人の気持ちに寄り添えなくなります。

そうなると、相手の人は、気持ちがわかってもらえなかったと考えてつらくなります。

そのときに、寄り添ってもらえる人がいると、安心できて気持ちが楽になってきます。

こうした寄り添いは、先週も書いたように、人間関係だけでなく、こころの中で自分が自分に語りかけているときにも同じように大切です。

そのうえで、「そのときにどのような考えが頭に浮かんでいましたか」と尋ねるとよいとベック先生は言います。

気持ちが大きく動いたとき、それまで自動的に考えていた、その考えに目を向けるようにするのです。

そこで、思考の自動操縦が手動操縦に切り替わります。

そうすると、自分が考えていることと現実に起きていることとを冷静に見比べて、考えすぎているところにブレーキをかけることができます。

思い込みのために問題が大きくなりすぎる前に対処して、問題を効率的に解決できるようになるのです。