こころトーク

2016.12.16

第64回 「長期連載を続けて」

先日、日本経済新聞社科学技術部主催の懇談会が開かれました。

例年、年末に開かれていて、科学技術の専門家が多く集まって懇談します。

科学ニュースでよくコメントしている人なども出席していて、私もついミーハー的になって遠巻きに眺めていました。

私がそうした集まりに呼ばれるようになったのは、毎週日曜日、日本経済新聞に「こころの健康学」と題したコラムを書いているからです。

書き始めたのは2000年で、それからほぼ毎週書き続けているので、800回は優に超える計算になります。

最初は1年くらいの心づもりだったのですが、ここまで長期になったのは、それだけ心の健康に関心を持つ人が増えたからなのでしょう。

翻って自分のことを考えてみると、1000字足らずとはいえ、毎週新しいテーマを考えて書き続けるのはかなりのストレスになっています。

そうしたストレスを感じながらも書き続けられたのは、まわりの人の手助けが大きかったです。

手助けと言っても、どのようなテーマで書けば良いと直接教えてもらったというわけではありません。

いろいろな人と出会い、話をしているうちに、執筆テーマが自然に頭に浮かぶことがあります。

たわいのないような会話の中にも、その人なりの工夫が語られることがあるからです。

患者さんと話しているときも同じです。

いろいろな精神症状に悩みながら、自分なりに対処しているその対処法の多くは、他の人でも使える工夫がたくさん含まれています。

それを紹介したいと考えて書いていると、専門家の私が、患者さんに多くのことを教わっていることに気づきます。

人間の潜在能力のすごさには驚いてしまいます。

コラムへの反響も、書き続けるエネルギーになりました。

ファンレターのようなものが届くことはほとんどないのですが、講演に行ったときにコラムの切り抜きの束を持って声をかけてくださる方が少なからずいらっしゃいます。

このように振り返ってみると、私たちは気づかないうちに多くの人に支えられていることに気づきます。

この気づきが、コラムを長く書き続けてきた私にとって、何よりも大きい報酬だったと思っています。