こころトーク

2017.03.31

第79回 「遺伝? 子育て? 性格はいつ決まる?」

前回、子育てに悩む母親の話を書きました。

その悩みの原因のひとつに、いまでも三歳児神話がもっともらしく語られることがあります。

三歳児神話というのは、子どもの性格は三歳までに決まるので、それまでは母親は子どもの元を離れないで子育てに専念すべきだという考え方です。

多くの学者が三歳児神話は神話でしかないと主張しているのですが、多くの母親はどこかでこの神話を耳にして、子どもの成長の責任は自分にあると考えるようです。

しかし、双子の研究など学問的な研究からは、子どもの性格や成長のパターンには、子育て以上に遺伝の影響が大きいことがわかっています。

性格の遺伝については、生まれつきの性格が大人になっても続くというハーバード大学のケーガン教授の研究が有名です。

臆病な性格について研究していたケーガン教授は、生まれて間もない赤ん坊の顔に扇風機で風をかけて反応を観察しました。

そうすると、三分の一の赤ん坊は大声で泣き出します。
ケーガン教授は、こうした反応を示す赤ん坊は生まれながらに不安が強く臆病な性格を持っていると考えました。

そして、これらの赤ん坊が大人になったときにその性格がどうなったかを調べました。

そうすると、不安が強くて臆病な性格は変わっていないということがわかりました。

このことからも、性格は生まれながらに決まっていると考えられます。

だからといって、子育てに何の意味もないかというと、必ずしもそうではないようです。

同じように不安が強くて臆病な性格を持っている人の間でも、大人になってからの人間関係に違いが出てきていたのです。

人見知りが強く自分の世界に閉じこもりがちになる人たちがいる反面、慎重ではあってもしっかりと良い人間関係を持てる人たちもいました。

その違いに影響するのが子育てです。

心配性だからと親が先回りして過保護になりすぎると、成長してから、人見知りが強く自信のない大人になってきます。

一方、親は必要なときにそっと背中を押すだけで、できるだけ自分で工夫して問題に取り組めるようにした子どもは、自律性のある大人に成長します。

子どもの力を育てるためには、周囲の人が自分の責任を感じすぎて過干渉になりすぎず、その力を信じてそれを引き出していくことが大事なのです。

そして、このような見守る態度は、子育てに限らず、人の力を引き出し育てるためにとても大切です。

 

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