こころトーク

2017.05.26

第87回 「強みに目を向けるフランセス先生の教え」

いま、私はアメリカ西海岸に来ています。
サンディエゴで開催されたアメリカ精神医学会に出席するためですが、
ちょうどサンディエゴには私が留学時代お世話になったアレン・フランセス先生が住んでいることもあって、フランセス先生ご夫妻の運転で米国西海岸を紹介してもらっているとこです。

フランセス先生は、アメリカ精神医学会が出版して全世界で使われているDSMと呼ばれる精神疾患分類の第4版の責任者を務めた人ですが、最近では『正常を救え』(講談社)を出版して世界的な注目を集めました。

この本は、精神疾患を癒やすためには、精神医学的な治療はもちろんのこと、一般に「正常」と呼ばれているこころの力にも目を向ける必要があるということを書いたものです。

じつは私も、このようにそれぞれの人が持っている強みに目を向けるフランセス先生に助けられた一人です。

留学当初は英語がおぼつかなく職場になじめないでいた私に、「カローラを作っている国から来たんだから、きっと頑張れる」と言って力づけてくれましたし、その後も、何かと力になってもらって、いまでも交流が続いています。

留学時代に英語で苦しんだのは、私だけではありませんでした。

当時3歳だった息子も、突然現地の幼稚園に放り込まれて、かなり戸惑ったようでした。

精神的余裕がなかったこともあって、私は最初のころ、子どもの変化に気づけなかったのですが、後で本人が言うには、幼稚園では皆が話していることがわからないので「寝たふりをしていた」そうです。

しかし、さすが子どもは言葉の吸収が早く、しばらくたつと幼稚園でも友だちと楽しく遊ぶようになってきました。

それを見て私は安心したのですが、それ以上に私にとって嬉しかったのは、新しく幼稚園に入ってきた日本人の子どもの手助けをするようになっていたことです。

私たちが住んでいたのはニューヨークの郊外でしたから、海外に赴任した家庭の子どもが同じ幼稚園に入ってくることもありました。

そのときに、私の息子は自分がつらい体験をしたからか、環境になじむまで手助けするようになりました。

若干身びいきな見方ではありますが、つらい体験が人生の肥やしになるということを身をもって体験することができました。

その息子も今では30歳を優に超えて、弁護士として人の手助けをする仕事に就いています。

◎『正常を救え』 アレン・フランセス著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062185512/cbtjp-22/

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