前回、部下の「ほめネタ帳」を作って部下のやる気を引き出し、自分が担当している支店の売り上げを全国一に押し上げた上司の話を紹介しました。
それぞれの人の良い面を見つけてほめることで意欲を引き出したことが、売り上げにつながったのです。
私たちの意欲は、ただ待っているだけでは出てきません。
何かをして「良かった」「楽しかった」と思う体験をして、「またやってみよう」と考えるようになるのです。
脳科学的には「報酬系」と呼ばれますが、心理的な「報酬=ご褒美」を体験することで、もう一度やってみようという気持ちになってきます。
観光地でも遊園地でも、訪問客に「良かった」「楽しかった」と思ってもらえるような体験をすることでリピーターになってもらいます。
「ほめネタ帳」を上手に使った上司は、部下が、ほめられたという良い体験をすることで、また頑張ろうという気持ちを引き出していったのです。
こうしたときに、意識しておいた方が良いことがあります。
そのひとつが、具体的にほめるということです。
「よくできているね」と、漠然とした形でほめても、部下が嬉しい気持ちになる可能性はあります。
しかし、具体的に何が良かったかを指摘された方が、ほめられたという実感は強くなります。
とくに、落ち込んだり自信がなくなったりしているときには、漠然とほめられても、口先だけだろうと考えてしまいがちです。
それに、そうしたときは、できていないことに目が向きがちです。
できていないことに目を向けて「もっと頑張らなくては」と自分を無理に励まします。
一方、できたことは「できて当たり前」と思ったり、「たまたまうまくいっただけだ」と考えたりします。
専門的に「価値の引き下げ」と呼ばれるこころの動きです。
そうしたときには、上司からほめられたとしても、本心からほめているとなかなか思えないのです。
ですから、上司は、具体的な事柄を取り上げて自分の考えを伝えるようにした方が良く、そのときに具体的に良かったことを書きこんでいる「ほめネタ帳」が役に立つのです。