こころトーク

2017.08.18

第99回 「『暑いですね』と言い合う効果」

東京は今週、はっきりしない天気が続いていて、暑さが一息ついた感じがします。

それにしても、日本全国、先週までの暑さは大変なものでした。

暑いと決まって思い出すのが、若いころに読んだエッセイです。

具体的に作者の名前を思い出せないのですが、誰でも知っている有名な作家か詩人です。

そのなかで、なぜ私たちはお互いに「暑い、暑い」と言い合うのだろうと書かれていました。

もちろん、そのように言うことで実際に気温が下がるわけではありません。

でも、汗を拭きながら「暑いですね」「本当に暑いですね」と言い合うと、少し気持ちが楽になります。

そこに人間関係の不思議さがあるのだと、その人は書いていました。

暑いときに限ったことではありません。

私たちは、あれこれ悩んでいるとき、このような苦しい思いをしているのは自分だけだと考えがちです。

そう考えると孤独感が強くなって、苦しさがますます強くなります。

問題によっては、そんなことで悩んでいる自分が弱い人間のように思えてくることさえあります。

そうすると、自分の悩みや苦しさを誰にも打ち明けられなくなって、ますますつらくなってきます。

自分のつらさは誰にもわかってもらえないという思いが強くなります。

悪循環です。

そうしたときに、いくらかでも他の人に自分の悩みを伝えることができれば、少し気持ちが楽になってきます。

ただ話を聞いてもらえただけでも、自分は一人でないという気持ちになってきます。

「暑いですね」と言い合うときのように、他の人も自分と同じように感じているとわかれば、それだけでも気持ちが楽になります。

自分の悩みを人に打ち明けるのは勇気がいるかもしれません。

そんなことで悩んでいるのかと言われるのではないかと不安になるかもしれません。

でも、そのように心配してつらい気持ちが続くくらいなら、思い切って悩みを打ち明けてみてはどうでしょうか。

「暑さ」を口にしあえる関係がその入り口になるのだと、私は考えています。

◆大野裕先生講演会情報——————-

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