こころトーク

2017.10.20

第108回 「『問題なのは何か?』が解決のスタート」

先々週にアーロン・ベックが主催する会議に出席するためにフィラデルフィアに行ったことは先週紹介しました。

会議の合間に、アーロン・ベックの娘のジュディス・ベックと、ベック親子を中心に作られているオンラインの研修システムを日本にどのように導入するかを話し合っていたときのことです。

私がいくつか提案したときに、彼女は「ちょっと待って」と言ってスマ-トフォンを取り出して私が言ったことをメモしました。

ジュディス・ベックは、私と同年代です。

そろそろ記憶力の衰えが気になる年頃だからでしょう。

聞いたことをすぐメモに取るようにして忘れないようにしているのだと思いました。

そのことで思い出したのが、『認知症になった私が伝えたいこと』(大月書店)の著者、佐藤雅彦さんのことです。

佐藤さんは、50代前半で若年性の認知症と診断されました。

その診断名を聞いて、佐藤さんはすごく落ち込んだそうです。

一人暮らしが続けられるかどうか、不安にもなりました。

その気持ちはよくわかります。

認知症は、治療法がない進行性の脳の病気だと言われています。

そのような病気にかかっていると言われたのですから、当然落ち込んで不安になるでしょう。

ただ、佐藤さんは、そうした状態から立ち直りました。

それは、動揺しながらも立ち止まって、「認知症の何が問題なのだろう」と考えることができたからです。

認知症は記憶力に障害が出る病気です。

だとすると、自分の脳の代わりに「外部記憶装置」を使えば良い、と考えたといいます。

そして、スマートフォンやタブレット端末を上手に使って、必要な情報を記録していきました。

苦手な分野を上手にカバーする手立てを考え出したのです。

それができたのは、「認知症」という言葉の重さに圧倒されながらも、具体的に何が問題かを真正面から考えられたからです。

だからこそ、その苦手な分野をカバーする方法を見つけることができたのです。

これは、認知症の人に限らず、誰でも使える発想だと、ジュディ・ベックの行動を見て考えました。

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◆大野裕先生講演会情報
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長野うつ病市民公開講座
「こころを元気にする10のレッスン」
日時:2017年11月5日(日)10:30~12:00
会場:ホテル国際21 3F千歳の間
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