こころトーク

2017.10.27

第109回 「信じること、信じてもらえること」

ずいぶん前のことになりますが、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という言葉が流行りました。

みんなで赤信号を渡るというのはあまり良いことではないかもしれません。

でも、他の人と一緒に行動すれば、怖いことでも思い切ってできるようになるという点では、意味のある言葉だと思います。

ここのところ続けてご紹介してきたフィラデルフィアでの会議でも、アーロン・ベック先生が、他の人の存在の大切さに言及していました。

ベック先生が認知行動療法の考え方を提唱してから受け入れられるようになるまでに30年近い年月を要したことは、これまでも書いてきた通りです。

その間、さすがのベック先生も思い悩んだそうです。

誰も自分の話を聞いてくれないので、思いあまって、当時13歳だった自分の娘にその考えを話して聞かせていたそうです。

その娘が「なかなか良い考えじゃない」と言ってくれたので、ずいぶん嬉しかったという話をして、参加者の笑いを誘っていました。

その娘というのがジュディス・ベックで、いまでは認知行動療法の中心的なメンバーとして世界的に活躍をしています。

このことからいくつかのことがわかります。

なかでも大事なのが、信頼できる人間が傍らにいてくれるということがこころの力になるということです。

まさに「みんなで渡れば怖くない」という心理です。

しかも、ただ側にいるだけじゃなく、自分のことを認める言葉をかけてもらえると、もっと安心した気持ちになれます。

一方で、話を聞いている方も、そのように支えることができれば嬉しい気持ちになります。

その内容が関心のあるものだと、ずっとこころに残って、それが自分の力にもなります。

このような人間関係の力は、科学的な研究からも裏づけられています。

4千6百人あまりの人を10年間追跡したアメリカの研究によると、自分のまわりにいる人を信頼している人は、そうでない人に比べて、うつ病になる割合が明らかに少なかったということがわかったといいます。

自分が住んでいる地域の人を信頼している人はうつ病になりにくいという研究報告もあります。

地域を、職場や学校、部活と言い換えても良いでしょう。

こころが元気になる、そうした人間関係を大事にしたいと思います。

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◆大野裕先生講演会情報
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