こころトーク

2018.08.10

第150回 「ストレスを味方に「ユーストレス」とは?」

いま私が担当しているひとつに月刊誌『武道』の連載があります。

「人生に活かす武道力」というタイトルで、ちょっと大げさな感じもしますが、私が専門にしているこころの健康やストレスを武道という視点から考えてみるという、ちょっと挑戦的な企画です。

そのなかで、最近、「ユーストレス」について書きました。

ユーストレスというのは、一般的にストレスと言われている良くないストレス、ディストレスに対して使われる言葉で、自分の力を発揮しやすくなる良いストレスという意味です。

以前に「こころトーク」でも紹介しましたが、私たちは、まったくストレスを感じない状態では力が入りません。

一方、ストレスがかかりすぎると緊張して、思うように力を発揮することができなくなります。

私たちは、ほどほどにストレスを感じて気が張っているときに、一番実力が発揮できるのです。

さて、月刊『武道』では、そうしたことを体験的に会得するのに武道の稽古が役に立つと書きました。

それには二つの理由があるのですが、そのひとつは、稽古を積み重ねていけば、複雑な動きでもあまり考えないでできるようになるからです。

ユーストレスの研究からは、単純な課題の場合には、ストレスが強くなりすぎても良いパフォーマンスを上げることができるということもわかっています。

ですから、稽古を積み重ねて複雑な動きを意識しないで自動的にできるようになっていれば、強いストレスを感じても自分の力を出し切ることができるようになると考えられます。

武道の稽古が役に立つもうひとつの理由は、自分がしていることに自分なりの意味や価値を見つけられると、ストレスを感じる状況でも、大きく感じすぎないですみます。

武道の試合の場面で、ただ勝つということだけでなく、自分にとっての意味や価値を見つけることができれば、自分らしさを忘れずに力を発揮できるようになります。

それはそれまでの稽古の成果を確かめることでも、自分に不足しているものに気付くことでも良いでしょう。

そのように自分にとっての意味や価値に目を向け、それを通して自分がレベルアップしていく道筋を考えることができていれば、不必要に強いストレスを感じないですんで、ほどほどのストレスを自分の味方にすることができるようになります。

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■講演情報
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「子どもたちのこころと夢を育てる方法」
日時 : 2018年8月19日(日)14時~15時半(13時半開場)
講師 : 大野裕
詳細はリンク先よりご覧ください
https://www.cbt-education.org/

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