先日、読者の方から、こころトークで私が「気づき」という言葉をよく使うようになっているが、それには何か理由があるのかという質問をいただきました。
じつは、私自身はそのことをあまり意識しないで書いていたので、そうしたご指摘をいただいてありがたく思いました。
最近たしかに私は「気づき」を大切なキーワードだと考えています。
そうした私の思いが気づかないうちに文章に表れていたのだと気づき、そのように丁寧にこころトークを呼んでいただいていることを知って、嬉しい気持ちになりました。
私が「気づき」を大切だと考える理由ですが、それは問題があって悩んでいる人の主体性が大事だと考えるからです。
認知行動療法は考えを切りかえるアプローチだと言われることがよくあります。
考え方のクセを変える方法だといわれることもあります。
しかし、そのように他の人から言われても簡単に考えを切りかえることはできません。
それどころか、自分を責めるような気持ちになることさえあります。
その場面でそのように極端な考え方をした自分が悪い、いつもそのように考えるクセのある自分が悪い、と考えてしまうからです。
しかし、とっさに考えたことですから、その後、意識してそのように考えないようにしようとしてもそれは無理な話です。
それに、私たちはまず悪い可能性を考えて自分の身を守ろうとします。
良い可能性ばかり考えていたのでは、思いがけない失敗をすることになりかねません。
ですから、とっさに良くない可能性を考えるのはやむを得ません。
ただ、その後もその考えに縛られたままでいると問題を解決することができなくなります。
そうしたときにちょっと立ち止まって現実に目を向け、何が問題かを具体的に判断して対応策を考える。
そのように自分を取り戻す結果として生まれるのが「気づき」だと私は考えています。
考えを切りかえるというのは、こうした主体的な「気づき」があって初めて可能になります。
あれこれ可能性を考えることは大切ですが、頭のなかで考えるだけでは単なる頭の体操で終わってしまいます。
考えたことが果たして役に立つかどうかを現実場面で主体的に確かめることで、気づきが生まれ、自分のものになります。
その主体性が大事だと、私は考えています。