こころトーク

2019.03.08

第180回 「日常にあふれる無意識の良さと注意点」

卒業式のシーズンです。

いろいろな思いを持って新しい世界に足を踏み出そうとしている人がたくさんいます。

この時期になると、私の友人で認知行動療法を専門にしている米国の精神科医ドナ・スダック先生が、医学部の卒業生全員に『あなたはなぜチェックリストを使わないのか』という本をプレゼントしていると言っていたのを思い出します。

医療の世界では、ちょっとした不注意が取り返しのつかない事故に結びつくことがあります。

もちろんそれは医療の世界に限ったことではありませんが、命に関わる仕事をしているだけに、そうした不注意が起きないように十分気をつける必要があります。

しかし、注意しないといけないといくら考えていても、はっと気がつくと注意が途切れていることがあります。

そうしたことが起きるのは、私たちが、基本的に意識しないで行動するようにできているからです。

毎日の生活のなかで、何か行動を起こそうとするたびに、ひとつひとつその行動の意味や順番を確認していたのでは、いくら時間があっても足りません。

そのときどきで、ほとんど何も考えないでさっと行動しているので、いろいろなことを達成することができるのです。

それはそれで必要なことですが、考えないで習慣的に行動してしまうと思わぬところでミスが出ます。

著者のアトゥール・ガワンデは、そうした事例を豊富に紹介しながら、ミスを防ぐためにはチェックリストが絶対的に役に立つと書いています。

これは認知行動療法とまったく同じ発想です。

認知行動療法は、私たちがほとんど気づかないまま考え行動するために問題に対処できなくなったり悩みが深くなったりするという前提にたっています。

だから、考えを記録する思考記録表(コラム)や行動を記録する活動記録表を使って自分の考えや行動をチェックすることを勧めるのです。

そのようにすれば、先週紹介したように、こころがコンピュータウイルスに感染したような状態になったときに早めに気づいて対策を立てることができます。

必要に応じて、他の人の考え方や行動をチェックして参考にすると、安定した対応ができるようになってきます。

前の記事 次の記事