先日、米国の心理学者のマーティン・セリグマン博士が来日して、話をする機会がありました。
セリグマン博士については、こころトークでも何回か取り上げましたが、ポジティブ心理学を提唱したことで世界的に知られています。
ポジティブ心理学に関心がある人たちがセリグマン博士を招聘し、その会合に呼んでいただいたのです。
セリグマン博士は70歳代後半で、耳が遠くなっているそうで、パーティーのような騒がしい会場では人の話が聞き取れないと言っていました。
しかし、そうした問題を抱えながらも、なお世界的な活動を続けています。
認知行動療法の創始者のアーロン・ベック博士も、目が見えず、車椅子の生活を送りながら、なお精力的に活躍しています。
こうした人たちが、耳が遠いとか目が見えないというハンディキャップを抱えながら活躍していることに驚きますが、セリグマン博士と話をするなかで、そのヒントのひとつに気づきました。
実は、セリグマン博士もベック博士も米国ペンシルベニア州のフィラデルフィアに住んでいます。
そうしたこともあって、二人は毎月会って話をしているそうです。
そのなかで最近、人間と動物の違いについて話をしていると言います。
二人が共通して考えている人間の特徴は将来を考える力だと、セリグマン博士は言っていました。
人間を含めて動物は、いまに生きています。
お腹が空いたり、眠くなったり、危険に対応したり、それぞれが大切なことですが、これは人間も動物も変わりません。
しかし、そうしたなかで将来を考え、将来により良く生きていくための工夫をするのは人間の力だと二人が話し合っているというのです。
私は、なるほどと思いました。
いま問題をかかえていたとしても、いま自分が持っている力をいかして将来自分らしく生きる工夫をすることができれば、その問題は相対的に小さいものになってきます。
精神医学と心理学の二人の巨人が身体的なハンディキャップをかかえながらなお世界的に活躍できているのは、将来を考えながら自分らしく生きる力を最大限にいかしているからだと、私は思いました。