こころトーク

2019.06.28

第196回 「フランセス先生が問う『正常とは何か?』」

来週は、米国滞在中にお世話になった恩師でもあり友人でもあるアレン・フランセス先生が家族と一緒に日本に遊びに来ます。

先週紹介したように、私は米国に留学したとき、最初はとけこめなくて苦労しました。

フランセス先生は、そのときに手を差し伸べてくれた恩人でもあり、それ以来、家族的な付き合いを続けています。

フランセス先生はアメリカ精神医学会が作成した「精神疾患の診断・統計マニュアル」第4版(医学書院)の作成責任者を務めた精神科医です。

この本は、これまでのエビデンスをもとに精神疾患を分類したものですが、その基準が曖昧なところがあるために、フランセス先生はその後、『〈正常〉を救え 精神医学を混乱させるDSM-5への警告』(講談社)を出版しました。

この本の中で、フランセス先生は正常とは何かを問いかけています。

そのようなことを書いているのは、正常と異常を区別する境界線が曖昧だからです。

そのために、一部の医療者は何でも精神疾患にしてしまって薬を処方することがあります。

そのために多剤大量処方、つまり多くの種類の薬をたくさん処方するという問題が生まれています。

もちろん、適切に薬を処方すれば精神的に助かる人はたくさんいます。

ですから、的確な診断と適切な処方がとても大事になるのですが、不必要に多くの薬を処方すると、かえって良くない反応が出てくることもあるので注意しなくてはなりません。

いわゆる精神疾患の脳内の変化が解明されていない現状では、薬は、自分らしく生きていくための補助的な役割を果たすだけです。

そうしたなか、フランセス先生は、精神的悩みを解消するには運動が良いとツイッターで発信しています。

私たち現代人は「エクササイズ欠損症候群」に陥っていると言い、「人類最古の活動」を「最新の癒やし手段」として活用することを提唱しています。

フランセス先生は、エクササイズは誰にとっても役に立つとした上で、とくに多くの治療を試してきて効果が見られなかった精神疾患を持つ人に試すことを勧めています。

もちろん、はじめるときは慌てずに、簡単なものからゆっくりと始めて、ケガをしないように注意して、楽しみながら続けることだと言っています。

そして、始めると決めたらすぐに、できれば友だちと一緒にできるものを始めると良いと言います。