こころトーク

2019.11.08

第215回 「腹を立てるのは悪いこと?」

先日の講演会での出来事です。

私が話し終わった後、少し強い口調で質問をした人がいました。

何をそんなにイライラしているのだろうと思って質問を聞いていると、私の講演中にいくつか携帯電話が鳴ったことに腹を立てていることがわかりました。

講演が始まる前に主催者が、携帯電話の電源を切るかマナーモードにするように言っていたのに、その指示を守らなかった人がいることに腹を立てていたのです。

その気持ちを率直に話した後、その人は、「このようなことで腹が立たないようにするにはどうすればいいんでしょう」と質問しました。

どうやら些細なことでも腹を立てることが多い方のようで、そうした自分の性格を変えたいと考えているようです。

その質問に対して、私は、腹を立てること自体は悪くないと答えました。

講演を聞くときに携帯電話が鳴らないようにするのは最低限のマナーです。

しかも、そのようにしてほしいとアナウンスもされています。

それなのに、その指示に従わない人に対してひどいと考え、腹を立てるのは自然なこころの動きです。

だからといって、そのときに声を出して、携帯電話を鳴らしている人を責めたとすれば、それは行きすぎでしょう。

しかし、その人は、そのようなことはしていません。

そうしたことをすると、携帯電話を鳴らした人と同じように、講演の流れの妨げになるということがわかっているからです。

腹立たしい気持ちをそのまま表現してしまうと、静かに話を聞きたいという他の人の気持ちを踏みにじることになります。

それがわかっていたから、腹が立っても、それを行動に移すことはしなかったのです。

その判断も素晴らしいと思い、そのことをその人に伝えました。

私たちが腹を立てるのは、こうしてほしいという自分の期待が裏切られたときです。

それをひどいと考えて腹を立てるのですが、その気持ちをそのままぶつけたのでは、かえって状況が悪くなることがよくあります。

そうしたときには、ひと息ついて、自分が期待する現実に少しでも進めることができるように考える必要があります。

私は、腹が立ってもそのように冷静に判断して行動できたことに気づいてほしいと考えながら、質問に答えました。