こころトーク

2020.08.28

第257回 「感情と思考の区別が苦手だと、認知行動療法は難しい?」

認知行動療法をする人の間で、日本人は感情と思考を区別するのが苦手なので、認知行動療法が難しい場合があると言われることがあります。

そのために、感情と思考をきちんと切り分けるように指導している専門家もいます。

たしかに、日本語で「・・・と感じた」と言われたとき、それが感情なのか思考なのかわかりにくいことがあります。

でも、それは、英語で“feel(感じる)”という言葉を使うときも同じなので、英語と日本語とそんなに変わりはないのではないかと、私は考えています。

あらためてそのようなことを考えたのは、認知行動療法の創始者のアーロン・ベックの著作『認知療法―精神療法の新しい発展』(岩崎学術出版社)を久しぶりに読んでいて、「不安」と「恐怖」の違いについて書いてあるのに気づいたからです。

「不安を感じる」とも「恐怖を感じる」とも言うことがありますが、このふたつは感情でしょうか、それとも思考でしょうか。

ベックは、不安は感情で、恐怖は思考だと書いています。

つまり、不安な気持ちになる、怖いと考える、と理解されるというのです。

でも、恐怖は感情のようでもあります。

思考とも言え、感情とも言えるこころの状態といった方が良いのかもしれません。

ここでお伝えしたかったのは、感情か思考かの違いを細かく考えるのはあまり意味がないということです。

認知行動療法で感情に目を向けるのは、何かにストレスを感じて心身の変調が起きていることに気づくサインになるからです。

場合によっては体の変調がサインになることもありますが、こうした心身のサインはアラーム(警報器)としての役割を果たします。

ですから、ここで大事なのは、感情か思考かという区別ではなく、心身のアラームに気づけるようになることです。

そのうえで、頭のなかをよぎった考えに目を向けるのですが、それは、極端に考えて問題解決が妨げられていることが多いからです。

そのとき、考えがイメージとして浮かんできている場合もあります。

そうした考えやイメージと現実に起きていることとを比較しながら、より現実的な考えをして行くことで、解決のヒントが見つかることが少なくありません。

こうした流れができていれば、思考か感情かにあまりこだわらなくても良いと、私は考えています。