こころトーク

2020.11.06

第267回 「ある男性がアマゾンの奥地で気づいた『幸せ』とは?」

この原稿を書きはじめた今、水曜日の昼、アメリカ大統領選挙の開票が進んでいます。

アメリカのテレビ番組CNNをつけると、興奮した様子で選挙の様子が映し出されています。

民主党のジョー・バイデン候補が優勢だと言われていますが、2016年と同じようにトランプ大統領が大逆転をするのでしょうか。

私は、この選挙結果がどうなるのか気になって、テレビを横目で観ながら、先週も紹介したアレン・フランセス先生の『アメリカは正気を取り戻せるか:精神科医が分析するトランプの時代』(創元社)に目を通しています。

この本の中でとくに印象に残ったのは、アマゾンの奥地で働いていたウィーン出身の小柄な男性マーロウの話が紹介されている「幸福の追求」の章です。

マーロウは知的な男性で、裕福な生活を送っていましたが、ある裏切りにあい絶望的な気持ちになります。

彼は、研究のためと偽ってアマゾンの奥地に分け入り、遭難死することを選択します。

しかし、アマゾンの奥地に住む人たちに助けられ、その人たちの「無条件の優しさ」のおかげで、傷ついたこころが癒されていきます。

フランセス先生が、この一連の体験から何を学んだかと聞いたところ、マーロウは「私たちに多くの幸せは必要ない」ということだと答えたそうです。

このマーロウの言葉から、フランセス先生は、本当に大切なものを大切にするこころを持つことから幸せが生まれるということを学んだと書いています。

私たちは、文明の発展とともに多くのことを手に入れてきました。

でも、それで幸せになったとは、必ずしも言い切れません。

最近、ある講演会で私の子ども時代のことを話す機会があったのですが、思い返してみると、私の子ども時代には室温を自動調節する冷暖房などありませんでした。

携帯電話はもちろん、固定電話をかけるのにも、相手につながるまで30分以上かかっていました。

まったく不便だったのですが、私たちはその後、多くのものを手に入れれば入れるほど、「もっと、もっと」という欲求が強くなってきて、ちょっとした不便にまで簡単に不満を感じるようになってきているようです。

そうしたなか、今回のコロナ禍は、そうした私たちにもう一度、何が大切かを考え直させるきっかけになりました。

今回の新型コロナウイルス感染症はたしかに厳しい状況ですが、個人的にも社会的にも成長できる機会になるのではないかと期待できる面もあると考えています。