こころトーク

2020.11.27

第270回 「増えるオンライン開催の寂しさとメリット」

新型コロナウイルス感染症の第3波が襲ってきていると言われていますが、相変わらず欧米諸国と比べると重症者数や死亡者数は低いままです。

それがなぜなのかはいまだに解明されていませんが、そのために、それほど心配しないでGO TOキャンペーンを利用して旅行に出かける人もいれば、心配で家の外にもなかなか出られないでいる人もいます。

それは人それぞれですが、その一方で、私たちの生活は確実に変わってきています。

たとえば、私たち専門家が集まって最新の知見を元に議論を深める学会も、いまではオンラインでお互い自宅や職場から参加する形になっています。

先月末も、恩師のアーロン・ベック先生が主催する認知行動療法の集まりがオンラインで行われました。

毎年秋に、ベック先生が住んでいる米国フィラデルフィアで開かれていた集まりですが、今年はオンラインでの集まりになり、直接顔を合わせることができず、寂しい思いをしました。

その気持ちを、毎週連載している日本経済新聞のコラムに書いたのですが、それが掲載された紙面を読んで、つい苦笑いをしてしまいました。

失ったことに目を向けて悲しんでいる自分の姿が、少し滑稽に思えたからです。

たしかにリアルに会えない寂しさはあります。

しかし、それでも、デジタル技術の発展のおかげで、オンラインでベック先生の話を聞くことができました。

長旅の疲れと時差に苦しみながら現地で話を聞くよりは、日本にいるままで話せた方が、肉体的にはずっと楽です。

まるで、ドラえもんの「どこでもドア」が実現したかのようです。

先週から今週にかけて三連休に開かれた、日本認知療法・認知行動療法学会の学術集会も同じです。

みんなで集まって議論をすることはできませんでしたが、その代わりに、いままででは考えられなかったほど多くの人がオンラインで参加し、議論をすることができました。

遠くに住んでいるために、参加するための時間がとれなかったり、移動の費用を払えなかったりした人が、多く参加したのでしょう。

今回の新型コロナウイルス感染症の拡大で困っている人が増えているのは困りますが、その一方で、格差が解消するというメリットもあると考えています。