こころトーク

2020.12.11

第272回 「体の痛みと認知行動療法」

最近、慢性的な体の痛みの治療のひとつとして認知行動療法が活用されるようになってきています。

認知行動療法を活用するといっても、考え方を変えれば体の痛みが消えるというわけではありません。

認知行動療法の考え方を使っても体の痛みは変わらないのですが、その痛みのために感じている心の不自由さを軽くすることはできます。

たとえば、体が痛いからといって横になってばかりいると、筋肉が落ちてきます。

家のなかで動かないで不自然な姿勢を取っていると、そのために痛みが強まったりもします。

結局は体の痛みに心が縛られて、ますます不自由な生活をすることになってしまうのです。

いつの間にか、人生の主人公が自分ではなく、痛みになってしまっています。

そうしたときに、本当に自分にとって大事なものは何かを考え、それが少しでも手に入るように行動することができれば、痛みに奪われていた人生の主役を、自分に取り戻すことができます。

もちろん、そのとき、痛みを気にしないで自由に行動すれば良いというわけではありません。

認知行動療法では、できることから少しずつ行動を積み重ねていって、自信をつけていくことを勧めます。

このペーシングという方法、つまり上手にペースを調整する方法を使うことで、行動の可能性を確認し、「どうせ何をやってもダメだ」という考えを変えていくようにするのです。

最初はごく簡単な、確実に成功したことから始め、徐々に難しいことに挑戦していくようにします。

そのとき、一度うまくいったからといってすぐに次のステップに進むのはあまり良くありません。

あることに成功したときには、強化学習の原理といって、同じことを数回試してみて、自然にできるようにしていきます。

このようにすれば、痛みを感じながらも、自分にとって大事だと思う行動ができるようになっていきます。

こうして自分を人生の主役に変えていくのですが、こうした方法は痛みに限らず、コロナ禍で不安を感じながら自分らしく生きていくために活用することもできます。