こころトーク

2021.07.23

第304回 「アーロン・ベック先生100歳の誕生日」

7月18日は、認知行動療法の創始者のアーロン・ベック先生の誕生日でした。今年で100歳です。

誕生日を祝うために、親しい専門家十数人がZoom(ズーム)で集まりました。もちろんベック先生も参加しています。

最近骨折したということで、横になったままでの参加で心配な気持ちもありましたが、娘のジュディ・ベック先生のiPhone越しに顔を見ることができて、とてもうれしい気持ちになりました。

それに、顔を見せるだけでなく、参加者の話にコメントまでしていました。

今回の集まりでは、参加した人たちが順番に1~2分、ベック先生との思い出を話すことになっていました。

その話を聞きながらコメントをする姿は、いかにもやさしく感動的でさえありました。

その雰囲気に私は、はじめてベック先生に会ったときのことを思い出してみんなに披露しました。

私はニューヨークに住んでいて、アムトラック(長距離電車)に乗って、フィラデルフィアにあるベック先生の事務所を訪れました。

ベック先生は、アメリカ人としては小柄な印象を受けました。

私はずいぶん緊張していたと思いますが、ベック先生はずっとかわらず穏やかでやさしい雰囲気で接してくださいました。

その雰囲気のおかげで、私はとても落ち着いて話をすることができました。

その体験から、そうした雰囲気を作り出せる力が臨床家としてとても大事だと実感しました。

その後、私も、患者さんと接するときに安心できる空間を作る工夫をしてきましたが、このようにお互いが安心できる空間を作り出すことは、治療の場面だけでなく、すべての人間関係で大切なことでもあります。

その後、私はベック先生が毎週開いている勉強会に参加するようになりました。

さらに私は、ベック先生に勧められて、ペンシルベニア大学に移って勉強を続けることになりました。

そのときにベック先生に、実際の場面で体験することが大事なんだとおっしゃっていただいたのですが、それは私が今でも大事にしている考え方です。

それから30年以上経ちましたが、その間、いろいろな形でベック先生に助けてもらったことに感謝して、貴重な誕生会が終わりました。