こころトーク

2021.09.03

第310回 「成功しても自信が持てない『インポスター症候群』とは?」

今回は、前回言葉だけ紹介したインポスター症候群について説明することにします。

インポスターというのは詐欺師、山師の意味で、自分が手掛けたことがうまくいったときに自分が詐欺師のように感じられてしまうこころの状態を表現した言葉です。

これだけ書いてもよくわからないと思いますが、自分に自信がない人は、あることにチャレンジしてうまくいかないと、「やっぱり自分には力がないんだ」と考えて、失敗を自分の責任だと感じてしまいます。

その一方で、自分が手掛けたことがうまくいくと、「たまたま、うまくいっただけだ」と考えます。

他の人から「こんなことができるなんてすごいね」「できる人なんだね」と褒められると、「この人は勘違いしている」と考え、そのように考えさせている自分がいかさま師のように思えてきて、つらくなります。

これは専門的には「帰属」の問題で、失敗の原因を自分に、成功の原因を運に帰属させていることになります。

それだけではなく、インポスター症候群を持つ人は「自分はまだ本物ではない、もっと頑張らないといけない」と考えて、今まで以上に頑張るようになります。

まるで、餌を目の前にぶら下げられて滑車の中を走り続けているネズミのようです。

いくら成果が出ても安心できず走り続け、疲れ果ててしまいます。

1985年に発刊された『インポスター現象』という本では、女性の社会進出に対する社会の壁が問題になっていた当時の状況を反映して、成功した女性がこのような心の状態に陥りやすいと書かれています。

自分は称賛されるような存在ではないと社会的に思い込まされているからそのように考えるようになるというのです。

しかし、こうした考えは必ずしも当時の女性に限ったものではなく、今でも、性別にかかわらず、自分が社会的に受け入れられていないと考えている人はもちろん、自分に自信を持てない人もこのように考えて、疲れ果てている可能性があります。

そのようにならないために、この本では、物事がうまくいったときに自分に投げかけている言葉、つまり自動思考に目を向けて自分を責めていないか確認するように勧めています。

それに加えて、成功を楽しむことや、信頼できる人に相談することの大切さ、さらには遊ぶことの大事さも指摘しています。