こころトーク

2021.11.26

第322回 「日本ポジティブサイコロジー医学会、学術集会を終えて」

今回は、先週少しだけ触れた日本ポジティブサイコロジー医学会について紹介します。

この学会は、マーティン・セリグマン先生が提唱したポジティブ心理学を科学的な立場から検証し普及させていくことを目的に設立された学会で、今年で設立10年を迎えました。

私は設立時から、認知行動療法をポジティブ感情やポジティブ体験のために生かす手立てについて考えてきました。

しかし、これまで精神疾患などこころのネガティブな動きについて目を向けてきた精神科医の私です。

ポジティブな体験に目を向け、ポジティブ感情を高めるのが大事だとわかっても、その具体的な方法を考えるのはなかなか難しいものがありました。

悩んだときにこころを軽くしたり、精神的に不調になるのを予防したりという発想になってしまうのですが、ポジティブ感情を高めるためには、それだけでは不十分です。

私は若いころに、ネガティブ感情とポジティブ感情が独立して動いているという研究の成果を学会で発表したことがありますが、ネガティブ感情が減ったからといって、ポジティブ感情が高まるわけではありません。

こうしたことも考えながら、これまでのポジティブサイコロジー医学会の学術集会では、どのような状態にあっても自分らしく前向きに生きていけるように認知行動療法で手助けできればと考えながら発表を続けてきました。

今回の学術集会では、「AIを用いたセルフカウンセリング」と題して、ポジティブ感情を高める手助けになることを目的に開発を続けているAIチャットボット「こころコンディショナー」について紹介しましたが、私たち専門家の発表に加えて、昼休憩の時間に海野雅威(うんの・ただたか)さんのジャズピアノが流れるという、うれしいハプニングがありました。

海野さんは、ニューヨークでジャズピアニストとして活躍していた昨年、コロナ禍でのアジア人に対するヘイトクライムに巻き込まれ腕が動かなくなるほどの大けがをした方です。

しかし、そうした逆境にも負けず、海野さんは自分の夢を力に、見事にジャズピアニストとして復活したのです。

海野さんの復活に向けての努力は、1120日に放映されたNHKスペシャル「この素晴らしき世界 分断と闘ったジャズの聖地」で紹介されたほか、今回の大会長の海原純子先生の時事メディカル連載「Dr.純子のメディカルサロン(https://medical.jiji.com/topics/2350)」で紹介されています。

海野さんの演奏も含めて、学術集会の様子は日本ポジティブサイコロジー医学会のHPの会員サイト(有料会員登録が必要です/ http://jphp.jp/kaiin_top.html)からご覧いただけます。

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