ゴールデンウィークが始まりました。
仕事から離れて自分の時間が持てる人も多いと思います。
その一方で、テレビをつけるとロシアのウクライナ侵攻など、こころが暗くなるニュースが流れています。
これからの世界がどうなるかと考えると、不安な気持ちになります。
それに対して何もできない自分がもどかしく、無力な気持ちになります。
そんな気持ちに、以前もなったことがあるのを思い出しました。
10年あまり前、東日本大震災の報道に接したときです。
多くの地域、多くの人が被災している様子がテレビで映し出されているのを観て、いたたまれない気持ちになりました。
何も変わらない東京で普通に生活していることに罪悪感のような感情がわいてきました。
じつは、この「こころトーク」もしばらく書くことができなくなりました。
自分の書く言葉がとても軽いものに思えたからです。
そのとき、私たち一人ひとりができることには限界があるということを、思い知らされた感じがしました。
しかし、その後、その限界を限界として受け入れることで、お互いに自分らしく生きていくことができるということに気づくことができました。
何の権力も持っていない一人の人間が世界を、そして日本を変えることはできません。
しかし、自分のまわりの人と一緒に、それぞれの人が自分らしく生きていくことはできます。
東日本大震災が起きて間もなくから、私は毎月、いわゆる被災地に行きました。
医療の専門家として治療にあたるのではなく、地域の人たちが取り組んでいる地域の人間的なつながりを強める試みを手伝うためです。
被災した人たちが、お互いのために手を貸し合って、災害から復旧、復興に取り組んでいる姿を見るのは、私にとってもとても励みになりました。
私たちは万能ではありません。
できること、できないことがあります。
信頼できる人たちと一緒に、自分たちができることを一つひとつ続けていくことで、私たちは自分らしく生きていくことができます。
テレビのニュースを目にして、世界や日本を考えることはもちろん大事ですが、それと同時に自分のまわりに目を向けて、お互いに自分らしく生きていくことはそれ以上に大事だと思っています。