先週紹介した「小さい喜びをシャワーのように浴びる」という言葉は、九州の不知火病院の看護師から聞いたものです。
不知火病院は、うつ病などの精神的不調のために会社を休まなくてはならなくなった人が心身を休める目的で入院をする、いわゆるストレスケア病棟をいち早く作って注目されている病院です。
海のそばの自然豊かな病棟で、ゆっくりと心と体を癒やしながら、自分らしさを取り戻していくことを大切にしながら精神医学的な治療を行うことを目的にして設立されたと聞いています。
しかし、自然の力だけでなく、小さい喜びをシャワーのように浴びてほしいといった発想をする病院のスタッフの存在も大きな力になっていると、私は考えています。
大きい喜びを感じられるようなことが起きるとうれしい気持ちになりますが、そのようなことはそうそう起こるものではありません。
大きい喜びを感じられるようなことが起きたとしても、その喜びは長続きしません。
とくに、物質的な喜びは長く続きません。
宝くじで大金を手に入れたとしても、その喜びは半年も経てば消えてきます。
人と人との交流の中で感じられる喜びが大事なのです。
人間的な交流がこころを癒やすことは昔からよく知られていて、「人薬」と呼ばれてきました。
人と話すことで、自分だけの思い込みから自由になって、新しい発想ができるようになってきます。
自分が他の人たちから受け入れられる存在であると思ったり、認められていると感じたりすることで、自分の存在意義を感じることができます。
ときには、精神的に疲れて人と会いたくないと思うことがあるかもしれません。
そうしたときに無理に人と会おうとすると負担になりますが、しかし、あまり一人の世界に閉じこもってしまうと、精神的につらくなってきます。
自分が誰にも認めてもらえていないような思いが強くなってくるからです。
そうしたときに、思い切って一歩踏み出してみると、また別の世界が見えてきます。
一歩踏み出した自分を見る目も変わってきて、自信が生まれてきます。
コロナ禍が少しずつおさまってきている今、こうした「人薬」の体験を大事にしながら、自分らしい生活を送りたいと考えています。